「あの人がいないと回らない」経理の危うさ
「経理は○○さんに任せてあるから大丈夫」——中小企業でよく耳にする言葉ですが、これは大きなリスクを抱えた状態です。ひとり経理は効率的に見えて、実は会社の成長を妨げる要因になります。
ひとり経理担当者が突然の病気や退職で不在になれば、請求書の処理が止まり、支払いが滞り、月次決算も作成できません。採用しようにも即戦力の経理人材は給与水準が高く、中小企業では採用競争に勝てないのが現実です。
ひとり経理の3つのリスク
1. 業務停止リスク
担当者の不在が即座に業務停止につながります。病気、介護、退職など、人生のイベントは予測できません。バックアップ体制がなければ、経営者自身が不慣れな経理業務に追われることになります。
2. 不正・ミスの発見遅れ
チェック機能が働かない環境では、意図的な不正も単純なミスも発見が遅れます。特に現金や預金の取り扱いを一人に任せきりにすると、内部統制上の問題が生じます。
3. 成長のボトルネック
事業が拡大しても経理体制が追いつかず、月次決算の遅延や分析不足により経営判断が遅れます。担当者の負荷が限界に達すると、採用しても引き継ぎ時間が取れず、悪循環に陥ります。
脱却のための3ステップ
| ステップ | 具体的な施策 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1. 業務の棚卸し | 現在の経理業務を全て洗い出し、頻度・難易度・重要度で分類する | 1〜2週間 |
| 2. マニュアル化・標準化 | 優先度の高い業務からフロー図と手順書を作成し、ツール統一を進める | 2〜3ヶ月 |
| 3. 体制の複数化 | 社内でクロストレーニングを実施、または外部専門家と役割分担する | 3〜6ヶ月 |
ステップ1: 業務の棚卸し
まず現状を可視化します。「月次決算」「支払処理」「給与計算」「請求書発行」など、経理担当者が行っている業務を全てリストアップし、それぞれの所要時間と難易度を記録します。この段階で「思ったより多岐にわたっている」と気づくケースがほとんどです。
ステップ2: マニュアル化・標準化
次に、業務を「誰でもできる形」に落とし込みます。手順書を作るだけでなく、会計ソフトの操作ルール、勘定科目の判断基準、承認フローなどを文書化します。この作業自体が業務の見直しになり、無駄な工程が見つかることも少なくありません。
ステップ3: 体制の複数化
マニュアルができたら、次は「できる人を増やす」フェーズです。社内に余力があれば他部署のメンバーに一部業務を教え、相互にカバーできる体制をつくります。人材確保が難しい場合は、記帳代行や給与計算など定型業務を外部に委託し、社内は管理とチェックに専念する選択肢もあります。
内製化と外部支援のバランス
重要なのは「丸投げ」ではなく、社内にコア業務を残しながら外部の専門知識を活用する設計です。例えば、日々の仕訳入力は外部に委託しても、月次レビューと経営分析は社内で行う。税務判断が必要な論点は顧問税理士と連携する。こうした役割分担により、少人数でも安定した経理体制を維持できます。
経理体制の構築は経営基盤の強化
ひとり経理からの脱却は、単なる業務効率化ではなく、会社の成長基盤をつくる投資です。当事務所では、業務フロー設計から人材育成、外部リソース活用まで、中小企業の経理体制構築を一貫して支援しています。現状診断から始めてみませんか。